愛情の鎖

結局私はその後も泣き続け、気付けばコウさんの車は目的の場所までたどり着いていた。


「着いたぞ」

「あ、はい」


だけどそこは私が思っていた所とは違う場所だった。
驚いた私はコウさんの横顔に疑問を投げかける。だけど返ってきた言葉は物凄く冷静なセリフ。


「今日から此処に戻れ」

「えっ、でも此処は……」


私の実家、だよね?

そう、ここは私が3年前に家族と住んでいた家。

てっきりコウさんのマンションに行くもんだと思っていた私はキョトンと拍子抜けしてしまう。


「…でも……」

「お前の本来の家は此処だろう?」

「だけど…」

「だったら何の問題もない。もう全て終わったんだ。梨央がこの家に戻ってくるのは何も変じゃない、むしろ普通だ」

「………」


その言葉に軽いショックを受ける。

彼の言ってることは正論だ。何も間違ってない。

宗一郎さんが逮捕された今、自由になった私が自分の家に帰ることは当たり前で、なんらおかしいことじゃない。


……なのに、どうしてこんなにショックなんだろう。

それをコウさんに言われると何だか得体のしれない寂しさが込み上げる。
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