愛情の鎖

「梨央ただいま」

「おかえりなさい。宗一郎さん」


翌日、朝早く玄関が開く音と共にいつものように背後からガッチリとした腕が巻きついてきた。

上等なブランドのスーツに身を包んだ体に、むせ返るような香水の匂い。

私はこの鼻をつくような男臭い香りが心底嫌いだ。


「今日はいつもより早かったんだね」

「ああ、今日はやっとごたごたしてたトラブルが一件片付いたからね」


そう言って嬉しそうに私の頬にキスを落とす宗一郎さん。

私はスクランブルエッグを作る手を止めて、そんな宗一郎さんの方へと向き直った。


「お疲れ様」

「会いたかったよ梨央。いい子にしてたか?」

「もちろん。ちょうど今から朝ご飯だよ」


そのまま唇にキスが落ちてきて私は躊躇うことなく彼の首に両腕でを巻きつける。


澤田宗一郎、42才。

彼は私の二周り以上歳の離れた旦那様だ。

そして私、澤田梨央(旧姓、中園梨央)は今年21才にしてこの男の法律上正式な妻なのだ。

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