愛情の鎖
……誕生日?
さも面倒臭さそうに煙草の火をすり潰したコウさんに私はキョトンとした顔を向ける。
「お子ちゃまにはそれで十分だ」
あ……
もしかして……
その言葉に以前の会話を思い出した。
「覚えててくれた、の?」
この前言ったこと。
『私、来週で22才になるの』
先週私がコウさんに冗談めかしに言ったことだ。
だから今日花火に誘ってくれたり、こんな物まで用意してくれたの?
ねぇ、そうなの?
「なんだよ、その顔は……」
「だって……」
だとしたらやっぱりらしくない。
「きっと明日台風でも来そうだね」
嵐でも起こりそうだ。
そんな意外な優しさに急に気持ちがくすぐったくなり、私はコウさんから顔を逸らしてしまった。
どうしてか気恥ずかしくてたまらない。
「一言余計だろう」
「はは……」
そっか。
うちのお隣さんは案外いい奴かもしれない。そう思ったらなぜか心の奥が急にポカポ温かい気持ちに包まれた。