愛情の鎖

家族を失いたくない。

一人になりたくない。


私の持ってきたケーキを夢中で食べる菜々が可愛い。

父のしわくちゃだけど穏やかな笑顔が嬉しい。

生憎、今日は大好きな母に会えなかったけれど、今の私にとって、そんな温かな家族の存在が何よりも大切に思えるのだ。


「お姉ちゃ……」


そして、楽しい時間が過ぎ、穏やかな気持ちのまま帰宅しようとした時だった。突然服の裾を小さな手に引っ張られ、私はキョトンとして菜々の方へ振り返った。


「ん?どうしたの?」

「えっと、あの、ね」

「うん」


もじもじと何か言いにくそうにそうに俯く菜々に向かってしゃがみ、私は首を優しく傾ける。


「ママ、ね。最近ちょっとおかしいの」

「おか、しい?」

「……うん。最近あんまり家にいないの」

「いない?家に?」


「これ、パパには内緒だよ」そう言って帰る直前、菜々に言われた言葉に私は言いようのない不安を覚えた。


『ママね、最近あんまり笑わなくなったの。それにね、そう言う時にかぎっていつも誰かから電話があるの。それでそのあとお洒落して何処かに出かけしちゃって』


暗い顔をする菜々が印象的だった。

何かあったの、かな?

胸に妙な引っ掛かりを感じながら、その日は「大丈夫だよ」と、とりあえず菜々を言い聞かせて私はマンションに帰った。

だけど…、菜々の言葉に嫌な引っかかりを覚えた私は数日後、再び翔太にお願いをして実家に行くことにしたのだけど…
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