下町退魔師の日常
久遠くんは考え込むように黙っている。
幹久は、イタズラっぽく笑いながら、久遠くんの顔を覗き込んだ。
「少しは妬いたか?」
久遠くんは、顔を上げる。
「さっきも言ったけどよ、俺はマツコが好きだよ。でもそれは、この町に住むみんなが同じ気持ちなんだ」
「幹久・・・」
「たった1つだけ、後悔してる事があるんだよ。あの時・・・あの時俺は、ボロボロのスカートとマツコを見ながら、何も言えなかった。それどころか、あいつが学校に復帰するまで、顔すらまともに合わせられなかったんだ」
そう言いながら、幹久は目を伏せた。
「もし・・・もしもあの時、俺がちゃんとあいつの側に居てやれたら・・・って、今でも後悔してる」
シゲさんは少しだけ口元に笑みを浮かべながら、黙って幹久の言葉を聞いていた。
「だからな、久遠。お前がちゃんと、あいつの側に居てやれよ。出て行くなんて言うな。今のマツコにゃ、お前が必要なんだよ」
「・・・・・・」
「何だよ、まだ分からねぇのか? 何ならもう一発、くれてやろうか?」
「その必要はねぇよ」
そう言うと、久遠くんは立ち上がる。
そして、松の湯の引き戸を開けて出て行った。
「なぁシゲさん」
「何だ?」
「もしあの時、俺がマツコの側に居てやったら・・・俺は今頃、松の湯の婿になってたかも知れねぇよな」
「んなこた知るかよ」
ただなぁ、と、シゲさんは続ける。
「俺くれぇの年になるとな。どんな事でも鼻くそみてぇに小せぇ事に思えて来る。この一連の出来事がどういう結末になるかは予想もつかねぇがな・・・お前らが俺くれぇの年になった時にゃ、笑い飛ばせるくれぇの小さな出来事になるんだよ」
「俺らがシゲさんくらいの年になるなんて、ぜんっぜん想像も出来ねぇよ」
そう言って、2人は笑い合った。
幹久は、イタズラっぽく笑いながら、久遠くんの顔を覗き込んだ。
「少しは妬いたか?」
久遠くんは、顔を上げる。
「さっきも言ったけどよ、俺はマツコが好きだよ。でもそれは、この町に住むみんなが同じ気持ちなんだ」
「幹久・・・」
「たった1つだけ、後悔してる事があるんだよ。あの時・・・あの時俺は、ボロボロのスカートとマツコを見ながら、何も言えなかった。それどころか、あいつが学校に復帰するまで、顔すらまともに合わせられなかったんだ」
そう言いながら、幹久は目を伏せた。
「もし・・・もしもあの時、俺がちゃんとあいつの側に居てやれたら・・・って、今でも後悔してる」
シゲさんは少しだけ口元に笑みを浮かべながら、黙って幹久の言葉を聞いていた。
「だからな、久遠。お前がちゃんと、あいつの側に居てやれよ。出て行くなんて言うな。今のマツコにゃ、お前が必要なんだよ」
「・・・・・・」
「何だよ、まだ分からねぇのか? 何ならもう一発、くれてやろうか?」
「その必要はねぇよ」
そう言うと、久遠くんは立ち上がる。
そして、松の湯の引き戸を開けて出て行った。
「なぁシゲさん」
「何だ?」
「もしあの時、俺がマツコの側に居てやったら・・・俺は今頃、松の湯の婿になってたかも知れねぇよな」
「んなこた知るかよ」
ただなぁ、と、シゲさんは続ける。
「俺くれぇの年になるとな。どんな事でも鼻くそみてぇに小せぇ事に思えて来る。この一連の出来事がどういう結末になるかは予想もつかねぇがな・・・お前らが俺くれぇの年になった時にゃ、笑い飛ばせるくれぇの小さな出来事になるんだよ」
「俺らがシゲさんくらいの年になるなんて、ぜんっぜん想像も出来ねぇよ」
そう言って、2人は笑い合った。