下町退魔師の日常
 20年前、あの惨事の引き金になった父さん。
 そんな父さんを、じいちゃんは恨んでいたって、シゲさんは言ってたけど・・・ちゃんとこうして、その資料を大事にしまってくれていた。


「ありがと、じいちゃん」


 あたしはじいちゃんの遺影にお礼を言った。
 そして、心の中で、父さんにも。
 これがあれば、鬼姫退治の参考になるかも知れない。
 あたしは夢中で、それを読んだ。




☆  ☆  ☆




 気が付くと、窓の外は明るかった。
 いつの間にかテーブルに突っ伏して眠ってしまったみたい。
 肩には毛布が掛けてある。
 あれ、久遠くんは?


「おはよう」


 キッチンに立っていた久遠くんがこっちを振り返る。


「おはよ・・・って、か、身体痛い・・・」


 くっ・・・首と腰と肩が。


「ノートにかじりついたまま寝たらそうなるだろ」


 ヤバい、あれだけ気合い入れて読んでたのに・・・眠気には勝てなかったか。
 いやむしろ、文字読んだらソッコーで眠くなった。


「魔物退治した後だから疲れてたんだろ。俺もお前が寝てから読ませて貰ったよ」
「うん」


 テーブルの上には、ノートがきちんと重ねて置いてある。
 まさか久遠くん、これ全部一気に目を通したの?
 すんごい細かい文字がびっしりとページを埋め尽くしてるんですが。
 今更気付いたんだけど・・・久遠くんって絶対あたしより遅く寝て、あたしより早く起きるよね。
 しかも、朝からシチュー作ってるし。
 きっといい奥さんになるなぁ。
 時計を見ると、9時を少し回ったところだった。
 いい匂いが、ここまで漂ってくる。
 おかけで朝から食欲出るわ。
 ま、ノートは後でじっくり読もう。
 美味しいシチューを食べてから。
< 112 / 163 >

この作品をシェア

pagetop