下町退魔師の日常
「だからね、明日あたし達・・・その・・・届けを、出して来ようと思ってるんだ」
「祝杯だぁぁぁっ!!」
シゲさん。
あなた、もう既に結構飲んでる筈なんですが。
「明日町中に知らせねぇとなぁ! 久しぶりのビッグニュースだからなぁ!!」
「やだねぇシゲさん、もうとっくに知れ渡ってるよ。メールでね」
マダム達は既に、各々携帯を持ち出している。
うっわー・・・。
ただでさえインターネットの高速通信ばりの速さで伝えられる情報が、本格的なインターネットに進出してるよ。
すると、一体どうなるんだろ?
そんな疑問は、すぐに解消された。
夜だというのに、町の人達が次々とやって来ては、お祝いを置いていく。
これには心底、感謝した。
そしてみんなは休憩室にガヤガヤと集まって、結婚式の日取りや段取りまで話し合う始末。
当人であるはずのあたし達はただ並んで、その光景を見つめているだけだった。
「・・・ま、こうなるのは分かってたけどね・・・」
「そうだな」
それでも。
みんながこうやって楽しそうにしているのを見ると、あたしも心から嬉しくなる。
久遠くんを見上げると、同じように嬉しそうな顔をしていて。
あたしはもっと、嬉しくなる。
☆ ☆ ☆
松の湯の営業が終わり、みんなが帰ったあと。
久遠くんがお風呂に入っている間に、あたしは空き地に足を運んでいた。
昼間久遠くんが買ってくれたカーディガンを羽織って。
あの日。
最後の戦い以来、あたしは時間を見つけると、ここに来ている。
あの時壊した祠は、新しく再建されている。
今度こそ本当に、鎮魂の為の祠だ。
鬼姫を倒し、夜が明けてからシゲさんと町の人達の何人かが、この空き地の様子を見に来たのだそうだ。
この時はもう、武田先生でも手に負えないくらいの大怪我を負っていたあたし達は、救急車で大きな病院に搬送されていたんだけど。
幹久がメチャメチャにした祠の残骸からは、骨と呪符が見つかった。
警察の判定で、それは間違いなく父さんのものだと。
それを聞いて、悲しかったけど。
ようやく、母さんと父さんを一緒のお墓に入れてあげることが出来て、あたしは少しだけ、ほっとした。
それから町の人達で話し合い、ここにまた祠を再建することにしたのだ。
「マツコ! ここにいたのか」
「久遠くん」
あたしは、振り向く。
「身体、冷やすなよ」
「久遠くんだって・・・お風呂上がりなんだから、風邪引かないでね?」
そんな会話を交わしながら、あたし達は、どちらからともなく寄り添って。
ここには、短刀も納められている。
数々の戦いを共にしてきた、けれどもう絶対に出番のない、錆びついてボロボロの短刀。
ジグソーパズルの最後のピースに描かれていたもの。
それは“愛”だったんだと、あたしは思う。
久遠くんと二人で、鬼姫に最後の一撃を加えたあの時。
眩いくらいに輝く光の放出の中で、あたしは、確かに侍の姿を見た。
「祝杯だぁぁぁっ!!」
シゲさん。
あなた、もう既に結構飲んでる筈なんですが。
「明日町中に知らせねぇとなぁ! 久しぶりのビッグニュースだからなぁ!!」
「やだねぇシゲさん、もうとっくに知れ渡ってるよ。メールでね」
マダム達は既に、各々携帯を持ち出している。
うっわー・・・。
ただでさえインターネットの高速通信ばりの速さで伝えられる情報が、本格的なインターネットに進出してるよ。
すると、一体どうなるんだろ?
そんな疑問は、すぐに解消された。
夜だというのに、町の人達が次々とやって来ては、お祝いを置いていく。
これには心底、感謝した。
そしてみんなは休憩室にガヤガヤと集まって、結婚式の日取りや段取りまで話し合う始末。
当人であるはずのあたし達はただ並んで、その光景を見つめているだけだった。
「・・・ま、こうなるのは分かってたけどね・・・」
「そうだな」
それでも。
みんながこうやって楽しそうにしているのを見ると、あたしも心から嬉しくなる。
久遠くんを見上げると、同じように嬉しそうな顔をしていて。
あたしはもっと、嬉しくなる。
☆ ☆ ☆
松の湯の営業が終わり、みんなが帰ったあと。
久遠くんがお風呂に入っている間に、あたしは空き地に足を運んでいた。
昼間久遠くんが買ってくれたカーディガンを羽織って。
あの日。
最後の戦い以来、あたしは時間を見つけると、ここに来ている。
あの時壊した祠は、新しく再建されている。
今度こそ本当に、鎮魂の為の祠だ。
鬼姫を倒し、夜が明けてからシゲさんと町の人達の何人かが、この空き地の様子を見に来たのだそうだ。
この時はもう、武田先生でも手に負えないくらいの大怪我を負っていたあたし達は、救急車で大きな病院に搬送されていたんだけど。
幹久がメチャメチャにした祠の残骸からは、骨と呪符が見つかった。
警察の判定で、それは間違いなく父さんのものだと。
それを聞いて、悲しかったけど。
ようやく、母さんと父さんを一緒のお墓に入れてあげることが出来て、あたしは少しだけ、ほっとした。
それから町の人達で話し合い、ここにまた祠を再建することにしたのだ。
「マツコ! ここにいたのか」
「久遠くん」
あたしは、振り向く。
「身体、冷やすなよ」
「久遠くんだって・・・お風呂上がりなんだから、風邪引かないでね?」
そんな会話を交わしながら、あたし達は、どちらからともなく寄り添って。
ここには、短刀も納められている。
数々の戦いを共にしてきた、けれどもう絶対に出番のない、錆びついてボロボロの短刀。
ジグソーパズルの最後のピースに描かれていたもの。
それは“愛”だったんだと、あたしは思う。
久遠くんと二人で、鬼姫に最後の一撃を加えたあの時。
眩いくらいに輝く光の放出の中で、あたしは、確かに侍の姿を見た。