下町退魔師の日常
「――・・・どうしてよ?」


 やっと絞り出したあたしのこの質問に、久遠くんは冷静な表情で淡々と答える。


「俺には分からない。何故お前がここまで犠牲にならなくちゃいけないんだ? 何で気付かないんだよ、この町の人達が言ってる言葉が全部――」


 久遠くんは、ここで一旦、言葉を句切った。
 反射的に、聞きたくないと思う。
 出来れば両耳を塞ぎたかった。
 けど・・・生憎、あたしの右手は、動かなかった。


「全部、嘘で塗り固められてるって事を」


 真っ直ぐにあたしを見て、久遠くんは言った。
 いたたまれずに、あたしは久遠くんから視線を逸らす。
 サスケ。
 ちょっとあたしの耳、塞いで。
 って・・・あんたも怪我してたんだ。
 可哀想に・・・痛かったでしょ。
 それでも、あたしを守るために戦ってくれたんだ。
 ごめん・・・ごめんね、サスケ。
 あたしは左手でサスケを引き寄せて、頬をくっつけた。
 あたしの目から涙が溢れてるのをサスケは不思議そうに見つめて、ほっぺたを舐めた。
 どうしよう。
 涙が止まらない。
 久遠くんは、窓の外を眺めた。
 まだ日は高く、外はきっと汗ばむくらいの陽気だ。
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