下町退魔師の日常
だけどあれからずっと心の中に押しとどめてきた疑問が、久遠くんの今の言葉で一気に芽吹いた。
この町の人達が“どうして”あたしに優しいのか。
それは、あたしが“退魔師”だからだ。
あたしがいないと、魔物が出て来た時に、誰かが一人犠牲にならなければいけない。
だから、みんなはあたしに優しくするんだ。
毎日のように松の湯にやって来ては、あたしのことを気遣って。
じゃないと、自分達の平和な生活が成り立たないから。
だから――。
「一緒に、この町を出よう」
真剣な久遠くんの言葉に、あたしは身動きすら出来なかった。
久遠くんは更に続ける。
「この町の連中は、お前を利用しているだけだ。自分達の身の安全の為に」
「・・・やめてよ・・・」
蚊の鳴くような声で、あたしはやっと、久遠くんを否定する言葉を絞り出した。
違うよ。
この町の人達は、そんな人達じゃない。
みんな優しくていい人なのに。
どうしてそんな事言うの!?
「久遠くんには・・・分からないんだよ。この町の人達が、どんなに」
「あぁ、分からないな」
あたしの言葉を、久遠くんは少しキツい口調で遮った。
「こんな目に遭ってまで、お前が何を守ろうとしているのか。町の連中の口車に乗せられてるだけじゃねぇのか? 自分達の保身の為に、お前を平気で犠牲にしてるのに」
「やめてよ!」
あたしは思わず、怒鳴り返す。
この町の人達が“どうして”あたしに優しいのか。
それは、あたしが“退魔師”だからだ。
あたしがいないと、魔物が出て来た時に、誰かが一人犠牲にならなければいけない。
だから、みんなはあたしに優しくするんだ。
毎日のように松の湯にやって来ては、あたしのことを気遣って。
じゃないと、自分達の平和な生活が成り立たないから。
だから――。
「一緒に、この町を出よう」
真剣な久遠くんの言葉に、あたしは身動きすら出来なかった。
久遠くんは更に続ける。
「この町の連中は、お前を利用しているだけだ。自分達の身の安全の為に」
「・・・やめてよ・・・」
蚊の鳴くような声で、あたしはやっと、久遠くんを否定する言葉を絞り出した。
違うよ。
この町の人達は、そんな人達じゃない。
みんな優しくていい人なのに。
どうしてそんな事言うの!?
「久遠くんには・・・分からないんだよ。この町の人達が、どんなに」
「あぁ、分からないな」
あたしの言葉を、久遠くんは少しキツい口調で遮った。
「こんな目に遭ってまで、お前が何を守ろうとしているのか。町の連中の口車に乗せられてるだけじゃねぇのか? 自分達の保身の為に、お前を平気で犠牲にしてるのに」
「やめてよ!」
あたしは思わず、怒鳴り返す。