下町退魔師の日常
「彼女が死んでから、殿様は何故か自害してるんだ。それもあの短刀を腹に突き刺してな。それからも、その短刀を手にした者は、短刀に殺されてる」
「殺されてる?」
「あぁ。特に女が手にした時は、その女は次々と短刀で人を殺していったらしい」
やっぱり、この話はどこまで行ってもハッピーエンドなんかにはならないんだ。
そしてまだ、この伝説は終わってない。
今もこの町で、生き続けてる。
あたしは、唇を噛み締めた。
その時代に生きていた人間なら、きっと言うだろう。
あの短刀は、呪われているって。
「姫様の怨念がこもった短刀がお寺に預けられて、鎮魂の為にあの祠が建てられた。それを動かした松の湯のご先祖が、短刀を手に入れた・・・そう考えると、つじつまが合うよな」
確かに。
そっかぁ、うちら、祠を動かして呪われた事だけに集中していて、短刀の生い立ち(?)なんて全然気にしてなかったもんねぇ。
どうしてそこ、気付かなかったんだろ。
まぁ、松の湯の人間っていうのは代々、のほほんとしてるって言うかほんわかしてるって言うか。
あたしは病室の天井を仰ぎ見て、深いため息をついた。
ただの昔話かも知れないけど、あたしだから分かる。
あの短刀は、ちゃんと生きているんだ。
魔物を倒す時、短刀は魔物の血を吸って悦びに打ち震える。
使ってるあたしが実感するんだから、間違いない。
そしてあの祠。
鎮魂の為だと言いながら、実は鬼になってしまった姫様を封じる為のものだ。
「――・・・マツコ」
久遠くんの声音は、深妙だった。
「この物語がもしも本当にあった事だとして、姫様の本当の願いは、何だと思う?」
姫様の願い。
あたしは目を閉じて、この物語の姫様に想いを馳せる。
鬼になってしまうくらい、何もかもを恨んで死んでいった。
それは、身分の違う人と恋に落ちたから。
「姫様ってさ・・・結局は、侍と一緒になりたかっただけなんじゃないかな」
あたしは、そう思う。
愛した人と結ばれたかった。
あの時代、どう考えても許されない事だったんだろうけど。
ただ純粋に、それだけを願ってたんじゃないのかな。
「殺されてる?」
「あぁ。特に女が手にした時は、その女は次々と短刀で人を殺していったらしい」
やっぱり、この話はどこまで行ってもハッピーエンドなんかにはならないんだ。
そしてまだ、この伝説は終わってない。
今もこの町で、生き続けてる。
あたしは、唇を噛み締めた。
その時代に生きていた人間なら、きっと言うだろう。
あの短刀は、呪われているって。
「姫様の怨念がこもった短刀がお寺に預けられて、鎮魂の為にあの祠が建てられた。それを動かした松の湯のご先祖が、短刀を手に入れた・・・そう考えると、つじつまが合うよな」
確かに。
そっかぁ、うちら、祠を動かして呪われた事だけに集中していて、短刀の生い立ち(?)なんて全然気にしてなかったもんねぇ。
どうしてそこ、気付かなかったんだろ。
まぁ、松の湯の人間っていうのは代々、のほほんとしてるって言うかほんわかしてるって言うか。
あたしは病室の天井を仰ぎ見て、深いため息をついた。
ただの昔話かも知れないけど、あたしだから分かる。
あの短刀は、ちゃんと生きているんだ。
魔物を倒す時、短刀は魔物の血を吸って悦びに打ち震える。
使ってるあたしが実感するんだから、間違いない。
そしてあの祠。
鎮魂の為だと言いながら、実は鬼になってしまった姫様を封じる為のものだ。
「――・・・マツコ」
久遠くんの声音は、深妙だった。
「この物語がもしも本当にあった事だとして、姫様の本当の願いは、何だと思う?」
姫様の願い。
あたしは目を閉じて、この物語の姫様に想いを馳せる。
鬼になってしまうくらい、何もかもを恨んで死んでいった。
それは、身分の違う人と恋に落ちたから。
「姫様ってさ・・・結局は、侍と一緒になりたかっただけなんじゃないかな」
あたしは、そう思う。
愛した人と結ばれたかった。
あの時代、どう考えても許されない事だったんだろうけど。
ただ純粋に、それだけを願ってたんじゃないのかな。