飼い犬に恋をした~始まりはいつも雨~
顔を上げるとそこにいたのは壱だった。
「何でこんな時間に…しかも何で泣いているんですか?」
いつの間にか辺りが暗くなっていた。
そんなことにも気付かなかった。
「何でもない」
「何があったんですか?」
「何もないって」
「俺にくらい…犬にくらい吐き出して下さいよ」
「何も知らないくせに…私の気持ちなんてわかるわけない!」
「そうですよ」
壱が私の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。