いつか、振り向かせてみせます。



人がひとりやっと通れるぐらいの狭い道で、そこを走る時は先生も無理に追い抜こうとしないようにって言われてたんだけど、その男子はとろとろと走る私にイラついてたみたいで。


ドンッ!


『きゃっ……!』


無理矢理追い抜こうとされてぶつかってしまった。その拍子に転んだ私に構うことなく、その男子は走っていってしまった。


私も気を取りなおそうとして立ち上がろうとしたんだけど……。


『痛っ……!?』


右の足首がズキズキして動かせない。
立ち上がれなくて、再びストンと座り込んでしまった。


さっき転んだ時に捻っちゃったんだ。どうしよう、力が入らない。歩けない!


でもこんな狭い道で座ってたら、あとから来る人の邪魔になるし……。


そう思って、もう一度頑張って立ち上がろうとした時。



彼……柊先輩と出会ったの。



『……動けないの?』


『あ、足捻っちゃったみたいで……』


他の人はみんな私を見ても通り過ぎていくのに、先輩だけは立ち止まってくれた。


『大丈夫?どっちの足?見せて』


『え、あの……』


とりあえず言われた通りに右足を先輩の前に出すと、先輩は私の右足に触れて、怪我の状態を診る。


『捻挫だな。テーピング用のテープなんて持ってねえしな』


わぁ……なんか本格的なこと言ってる。
運動部の人かなぁ。


そんなふうにぼんやりと考えていると、先輩が私の前に背中を向けてしゃがんだ。



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