いつか、振り向かせてみせます。
柊先輩の想い
「……で!かえで!」
「うひゃあ!?」
耳元で大きな声がして、私は驚きのあまり椅子から飛び跳ねるように立ち上がった。
「……あ、菜々」
声の主は親友の菜々で、「何回も呼んだのに」と頬を膨らませている。
「もう昼休みだよ?お弁当食べようよ」
「え、あ、もうそんな時間?」
時計を見ると、お昼休みが始まってからかれこれ3分ほど経っていた。
トイレを済ませてから私に声をかけてくれた菜々だけど、ぼんやりしててまったく気づかなかったみたい。
「最近どうしたの?ずーっと上の空だよ?何かあった?」
何か……。
そうだ。数日前、朝登校してきたら、教室の前に柊先輩がいたんだ。
そしたら、この前のクッキーのお礼を言われて。
それから……。
『君に好きになってもらうほど、俺はいい人間じゃないから』
あれはどういう意味だったんだろう。
どういう意図で言われたんだろう。
私の為?振り向かないってわかってるから、私をこれ以上傷つけないようにとか?
それとも普通に考えて、やっぱり拒否された?私がしつこいから引かれちゃったのかな……?
「とりあえず、ほら、天気もいいし外で食べよ!」
考え込んでしまった私を、菜々が中庭へと誘い出してくれた。