いつか、振り向かせてみせます。
先生に名前を呼ばれ、答案用紙を受け取る。
「三島、今回よくやったじゃないか。この調子で次のテストも頑張れよ」
え……じゃあ……。
先生にそう言われ、促されるように答案用紙を開く。
隅っこに赤ペンで大きく書かれた数字を見るやいなや、私は目を見開いて驚いた。
「は……はちじゅう……ごてん……」
高校のテストで、しかも大の苦手教科である数学でこんな素晴らしい点数を取るなんて……。しかもこの私が!夢みたい!
期待の遥か上を行く点数だった為に、若干逆に放心状態になりながら、やっとの思いで自分の席に戻る。
そんな私に、さっそく当然のごとく西崎が絡んできた。
「かえで!何点だった!?」
「先輩に教えてもらった成果は!?」
いつの間にか菜々まで私のもとに駆け寄り、身を乗り出して聞いてくる。
得意げに答案用紙を広げて掲げてみせると、“85”の数字を目にしたふたりは揃って呆然としてしまった。
「まじかよ……あのかえでが?俺、負けたとか信じらんねぇ」
「あたしも……」
顔を見合わせ、尚も不思議そうにしている菜々と西崎に、私は恥ずかしがることなく素直に言ってやった。
「先輩への愛のパワーで頑張っちゃったんだもんねっ!」
しーん。
誰も何も言わない。言ってくれない。
2人とも、ニヤニヤしている私をただただ冷ややかな目で見つめるだけ。