いつか、振り向かせてみせます。
先輩の引退試合、絶対応援に行きたい!
「でさ、それで……試合は今度の土曜日なんだけど、かえでその日どうせ暇だろ?だから……あの……その……」
「西崎!ありがとう、試合のこと教えてくれて。私、今日の放課後先輩のとこ行ってくる!」
「……へ?」
お弁当を出そうとする西崎の手が止まる。
「もう引退の時期なんだねぇ、私知らなかったー。菜々、一緒に先輩の応援行こうね!」
「あたしは別にいいんだけど……」
菜々が、何故か口をあんぐりと開けたまま固まっている西崎に視線を送る。
「? 私、何か変なこと言った?西崎どうしちゃったの?」
「かえでの鈍感さには頭が上がらないよ」
呆れたように笑う菜々。
西崎はやっと開きっぱなしだった口が閉じたかと思うと、何故かしょんぼりとした表情を浮かべていた。
「ドンマイ、西崎」
「よせやい、同情はいらねーよ」
肩をぽんと叩く菜々に、西崎はそれに答えながらも菜々の優しさに満ち溢れた手を振り払っていた。
「でも、西崎もすごいねぇ。スタメンに選ばれるなんて。頑張ってね!」
「かえで……サンキュー!絶対勝ってやるぜ!」
にこっと笑ってそう言うと、西崎はガッツポーズをして意気込む。
そんな西崎を見て、私はハッとして思いついて問いかけた。
「ねぇねぇ、試合の応援って学校の制服のほうがいい?ワンピースとか可愛い服着て行っちゃダメかなぁ?」
「知るかよ、んなもん!」
即答されてムッとしたけど、西崎が何故か目尻に涙を光らせて自分の席に戻っていってしまったので何も言い返せなかった。