いつか、振り向かせてみせます。
「柊、ここに座って。手当するから」
梨花さんがコートの外に用意したパイプ椅子に誘導する。
先輩は、部員の人たちに肩を借りて何とかそこまで向かい、ゆっくりと腰をおろした。
「足、見せなさい」
「……」
梨花さんにそう言われても、バスケットシューズを脱ごうとしない柊先輩。
「見せて!」
「……たいしたことないって」
今度は梨花さんが怒るように強く言ったので、先輩はしぶしぶ右のシューズと靴下を脱いだ。
「……っ!」
先輩の右の足首は、真っ赤に腫れ上がっていた。
私は今まで運動部に入ったことはないし、大きな怪我もしたことがないから、先輩の身に何が起こったのかはわからない。
でも、あの怪我がひどいものだっていうことは本能的に感じ取った。
そして、この怪我が今度の試合に影響するんじゃないかってことも……。
「捻挫だな」
バスケ部の主将さんが、つぶやくように言った。
だけど、他の部員にも、もちろん柊先輩にもその声は届いていて、みんなの表情が変わる。
「俺は大丈夫だって!こんな軽い捻挫なんて、全然問題ないよ!」
軽い?ほんとに軽い捻挫なのかな?
あんなに真っ赤に腫れてるのに?
私と同じことを考えていたのか、梨花さんが柊先輩の右足にちょんと触れると、先輩が「いってぇ!!」と声を上げた。
「そんなので、どこが軽い捻挫だって言うのかしら」
「梨花……」