いつか、振り向かせてみせます。



黙り込む先輩と同じように、部員のみんなも言葉を発しようとはしない。


「……あの、試合はいつなんですか?」


おずおずと、私が控えめに聞くと、部員のひとりが力ない声で答えてくれた。



「今度の土曜日だよ」



土曜日ってことは……5日後……。


そんな、一週間も経たないうちに、あの腫れ上がった足が治るのかな。あのつらそうな痛みは引くのかな。


到底、そうは思えない。


みんなそれがわかっているからこそ、悔しそうな顔をしている柊先輩に、かけてあげられる言葉が見つからないんだ……。


「誰か、バケツに氷水入れて持ってきて」


「はい!」


梨花さんの指示で、1年生の子が慌てて体育館を飛び出していった。


「試合までまだ5日もあるんだ。絶対治してみせる。だから、みんなそんな顔するなよ」


柊先輩が、場の空気に合わない明るいテンションで言う。


「かえでちゃんも……。今度の試合は、俺たち3年の引退試合なんだ、観に来てよ」


「先輩……」


柊先輩がふわりと笑う。
今度は、心からの笑顔だってわかった。


でも、主将は……。



「内村。今度の試合、お前は出さない」



先輩を気遣ってのこと、当然のことだって私にだってわかる。


だけど、柊先輩から笑顔が消えた……。



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