神聖魔法団【下】



「確かに黎奈は炎虎を刺した。
だけど、どうだ?炎虎は死んでるか?
痛みはあったかもしれないけど、黎奈のことだ。
剣に何か魔法でも仕込んだのかもしれない。

普通ならばこんなに深く腹部を刺されたならもう息はほとんど出来ないはずだ。
だけど炎虎はそんなことなく眠っている。
おかしくないか?」




「言われてみれば・・・。
私が魔法を使ってないのに呼吸も普通だし、本当に眠ってるみたい・・・」




炎虎の顔を覗き込みながらそう言う天音。




「黎奈は刺したけど、殺すつもりで刺したわけではない。
本当に刺したわけではない。
むしろ助けるために刺したんだ」




黎奈に視線を向けながら話す。




「やり方は黎奈らしくないけど、これしかなかったんだろう。
俺達もまんまと騙されたよ・・・。

それで、黎奈が目を覚まさない話しは置いといて。
先にダークホールが消えない理由を話す」



皆が俺の話を聞くため視線を黎奈から俺に移す。



その目はさっきよりも光に満ちてるようにも思えた。




「まずダークホールがなぜ存在するかについて考えてみたんだ。
俺が考えたのは闇族・魔族が人間に姿を見られないようにするために、ダークホールを作ったんだと思った。
そう考えたら全部繋がったんだ。

闇族・魔族が滅んだのにダークホールが消えないってことは他に姿を見られたくない“何か”がいるんじゃないかってな。」



「その“何か”ってなんだ?」



「最後、涯たちが魔力を吸い取られ終わった後、姿を現したよ。
その“何か”はね」



そう言うと皆の顔が何かに気付いたような表情に変わった。



< 532 / 632 >

この作品をシェア

pagetop