恋のはじまりはキス
咲の声は大きかった。
幸い食堂には人が少なくて注目されることはないようだけど…恥ずかしい。
きっと私の顔は真っ赤だ。
「あ…ごめん。」
と、咲は自分の口を抑える。
「驚いた?」
「うん。だって、百合かわいいし優しいし。」
かわいい?優しい?
「私見た目も中身もかわいくないよ。私告白とかされたことないし…」
「百合はまず自分の魅力に気づいてあげなきゃダメだよ?
そうじゃないと、本当の自分引き出せないって。
まずは、そのファンデーションだけのメイクと、まとめるだけの髪をなんとかしよ!」
オシャレ。なんて興味がない私は最低限のことしかしていない。
すっぴんで仕事に行くことが禁止されているから、メイクは咲の言う通りファンデーションとリップ。
髪ははねているのをごまかすためにまとめるだけ。
ヘアゴムは100均で買ったノーマルな黒ゴム。
おまけに、視力いいのに眼鏡をかけてごまかしている。
対して咲は派手すぎないきっちりメイクで、いつも髪を巻いたりアレンジしてる。
休日は自分磨きでエステとか行くって言ってたっけ。
努力してるんだなぁ。
でも…
「私はこのままでいいかな」
自分を変える勇気がなかった。
「そんなこと言わないの。もし買い物行くなら付き合うしいつでも言って!ほら、昼休み終わるよ、行こう!」
「うん。」