恋のはじまりはキス
「で、取引先の女性何人落としてきたの?」
林くんはコミュニケーション能力が高くて、見た目もオシャレ。
彼女が複数いるとか、取引先の女性を落として契約をとってきてるとか、色々な噂がある。
「直球だね。百合さんまで信じてるの?落としてないってー」
「じゃあ彼女が複数いるってのは?」
ははっと笑う林くん。
「それはーうん、否定しないかな!」
否定しないんだ。
何人もいることがうらやましい訳じゃないけど…すごいなぁ。
《10階です。下にまいります。》
恋人が複数いる人と恋人ができたことのない人。
なんなのこの差。
はぁ。
エレベーターに乗り込むと同時にため息をついた。
「ため息ついてどうした?なにかあった?」
《ドアが閉まります。》
「ううん、なんでもない。」
私がそう答えると、林くんが近づいてきた。
「ちょ、林くん!?」
男の人に慣れていない私。
でも、そんな私に構わず近づいて耳元まで林くんの顔がきた。
え?なに?え!?
「彼氏いたことないってことはキスしたこともないの?」
バサッ
持っていた鞄が私の手をすりぬけて落ちた。