恋のはじまりはキス
相手は年下で
彼女いっぱいいて
彼氏がいたことのない私とは正反対で。
まさかそんなことないよね。
うん、なにかの間違い。
「林くん、私こっちから帰る!またね。」
もう日が落ちた暗い夜。
逃げるように歩いた。…つもりだった。
「ちょっと待って、百合さん!」
3秒もたたずに捕まれる私の手。
「こっち来て。」
いつも高めのトーンで話すのに、今までに聞いたことのない低い声。
すぐ近くの公園に連れていかれ、ベンチに腰かけた。
その瞬間…
…っ!!
私の唇は塞がれていた。
え、いま私は何をされてる?
えーっと…
頭の中が真っ白になる。
我にかえったかのように、いきなり離れた林くん。
今のってキス…だよね?
「ご、ごめん。百合さんがかわいくて、つい。」
公園の照明は暗く、林くんの表情がちゃんと見えない。
私のさっきの気持ちがバレたのかな?
ドキドキしてるの伝わったのかな?
そうなら…恥ずかしすぎる。
私と林くんの関係はたまに話す同期なだけで、特別仲良くしていたわけでもない。
…なのに、こんな気持ちになるなんて。
でも、林くんには彼女がいる。
もしかしたらキスだって挨拶程度なのかもしれない。
「えっと…わたしは初めてだけど、林くんにとってはたいしたことな…「百合さん!?」
自然と涙が流れていた。
泣くつもりも泣きそうだなとも思ってなくて。
ただただ、自然と。
みっともないような気がして、私はなにも言わずに走った。