ブンキテン
ここまでそう言い切れるのは、わたしが図書委員として谷原くんと一緒にいて、谷原くんの人の良さに触れてきたからだ。
初めて図書室に訪れたであろう後輩に、スッと近づいて本の大体の配架場所を説明したのを見たのが最初だった。
それからも、少し声を大きくして話していた先輩たちにさりげなく注意したり、カウンター前の本棚の高い位置にある本を手の届かない女の子に気がついて取ってあげていたり、谷原くんが誰かに手を差し伸べる様子は何回も目にした。
わたしも、時々谷原くんに助けてもらった。
そんなわけで、少し惚れっぽいと自覚しているわたしが、谷原くんを好きになるのにそう時間はかからなかった。
谷原くんが細い目をさらに細くして笑うところとか、笑うと頬にえくぼができるところとか、暇な時間に配架前の本を物色しつつ読む真面目な顔とか、気づいたら谷原くんのいろんな表情を知っていて、さらに、もっと知りたいと欲張る気持ちがどんどん溢れそうになるのがとても辛くなってきている。