短編
東雲の言う事を要約すると東雲は吸血鬼で狼人間でもあるんだという。
普通吸血鬼は下僕として狼人間を従えるか、吸血により眷属の吸血鬼を作り、連れ添って生きていくらしい。
ただ東雲が吸血しても吸血鬼ではなく狼人間になってしまうらしい。眷属吸血鬼は親吸血鬼に勝てないが親吸血鬼による拘束力はそこまでない。
しかし狼人間は違う。一度契約するとその吸血鬼に絶対服従を誓うことになる。
なので契約しない狼人間も多い。
ここで大事なのが東雲が吸血し、狼人間にした者は狼人間になると同時に強制的に契約したことになってしまうという事。
僕と契約して狼人間になってよ。
あの白い悪魔が脳裏によぎった。そうだこいつも白い。若白髪だ。
全裸で犬耳犬尻尾の生えた男と泣く若白髪の男。
どうしてこうなったと考えていると、ううと呻く声が聞こえた。目出し帽男が喉をおさえながら起き上がろうとしていた。
そうだ、こいつが原因じゃん。軽くもう一発いれとこうと東雲を引き離す。
亮が足を振り上げた所でようやく東雲は目出し帽男を見た。そして亮がやろうとしていることにも気づいたようだ。
止めるには遅かった、もう足は目出し帽男の脳天目指して落下しはじめていたから。
「やめろ!」
え、と思う間もなく、足は急回転。
突然の反抗期に自分のバランスが保てずにその場に転んだ。傍からみたらなにやってんだよ恥ずかしい状態である。
ちなみに全裸なため大事な所を晒しながら転んでいる。恥ずかしい。
「あ、ご、ごめん…」
綿毛みたいな髪をぽやぽや揺らしながら東雲が視線を逸らした。
見上げる形になったが、彼の少し見える首が赤くなっていたのできゅーんとなった。くそが、怒れない。
これが絶対服従か、厄介この上ない。
少しだけ反応を見せた亮の息子を無意識に尻尾が隠した。