短編
高月は荒らした亮の部屋の片付けに行かせることにした。
ガラスはもちろん弁償、といったのだが、こいつはあろう事が自分の金というものを持っていなかった。全て盗んだものだという。
東雲が申し訳なさそうに眉をさげて私が払うよというと、高月は我が主ぃぃいいいと叫んで東雲に抱きついた。
「よくわかんねーことばっかで頭痛い」
高月の脳天にチョップを食わらしてやりながら東雲だけを抱き寄せる。
あたまをおさえながら喚く高月は放置して東雲の首筋に鼻をよせて……、ってまるで犬のようだ。東雲が良い匂いがするから悪いのだと誰にでもなく言い訳をして、結局首筋に顔をうずめた。
「うん、ごめん。ごめんね。ゆっくり教えてあげる。亮も一緒に住もう?」
亮のあたまを優しく撫でながら、東雲はその手つきと同じく優しい声をだした。
ああ、今無性に東雲の顔を見たい。この良い匂いも捨てがたいが、それよりも東雲の顔が見たかった。
「ね、おねがい」
幼い子供のおねだりような、可愛いくて甘くて
。頬は赤くてかじりついたら美味しそうで、亮はいつの間にか頷いていた。