短編
「おなかすいた!」
スーパーにつくなりアダムはパタパタと走り出してしまった。
リリーがすぐにほっぺを膨らませてアダムの後を追いかける。
きっとリリーがアダムを連れてきてくれるだろう。そう思うもののやっぱり心配でニコラスとユーリの手をとって3人で追いかけた。
「やっぱりここだ」
アダムとリリーの喧嘩する声がしたのはお惣菜コーナーが見えてからだった。
アダムは空腹を訴えているがリリーははしたないと怒っている。
それをみたニコラスとユーリはビビってしまって雪平の後ろに隠れてしまった。
「アダム、リリー喧嘩はやめなさい」
なるべく怒った顔をつくって2人に声をかけた。
すぐに2人は雪平に気づいたが、その顔は怒られた子供の顔ではなかった。にやにやといってもいい。これは4歳の子供の顔ではない。
「可愛いな、おまえ」
「まあ素敵よダーリン!おこってないんでしょう?」
そしてその声も4歳の子供のものではない。
アダムの瞳は赤く染まり、リリーの瞳は全部が黒くなっている。
雪平はすぐに周りを見渡したが、人が少なく誰も子供達の異変に気づいた者はいないようだった。
ほっと一息つくとアダムとリリーの2人だけに聞こえるように近寄った。
しゃがんで視線もあわせる。
後ろにいたニコラスとユーリも真似をしてしゃがもうとして、コロリと転がっていた。
「悪魔が出ていいのはお家でだけだって言ったでしょ!はやくアダムとリリーに戻って!」
雪平はぺちんと2人を順番に叩いた。とはいっても全く痛みはない。
叩かれた2人は顔を見合わせてにっこり笑い、そしてゆっくり瞼を閉じた。
次の瞬間にはきょとんとしたヘイゼルグリーンの瞳と黒が減った瞳が雪平を見ていた。
「またでたー」
「もー!あだむのちぇーよー」
パタパタと2人でまた喧嘩をはじめてしまい、雪平は弟達と買い物にきたことを後悔していた。
弟達が荷物持ちを手伝いたいというから、はじめて買い物に連れてきてしまったが、どうやらまだ早かったようだ。