短編
雪平が捨てられた孤児院は、普通の孤児院ではなかった。
悪魔憑きと呼ばれる子供が捨てられたり、誘拐されたりして集められた孤児院だった。
殆どの子供は入っては消えていったが、アダム、ニコラス、ユーリ、リリーの四人は特別悪魔と同化していて教会の監視下に置かれていたのだ。
浄化といっては幼い子供達の心や体を傷つけているのを雪平はじっと見ているだけだった。
そして大人達が立ち去った後、手当もされずに放置された子供達をなるべく優しく介抱することしかできなかった。雪平はまだ子供で、助け出すすべを知らず、自分もまた教会の庇護にある存在で、逆らうことすら考えたことはなかった。
どうしてか雪平は子供達にとり憑いた悪魔に気に入られていた。
雪平が日本から実の親が迎えにきたと話した時、子供達は詳しいことは分からなかったが雪平がいなくなることを寂しがって大泣きした。そして泣きつかれた子供達にかわって現れた悪魔達にも同じ話しをした。4体の悪魔達は静かに聞いていた。
雪平はこの幼い子達を連れていきたかったが、悪魔憑きで教会の監視下にある子供を連れていけはしないだろうと思い、悪魔達に子供達を幸せにして欲しいと頼んだのだ。
悪魔は笑っていた。悪魔になにを言う、と。
それでも雪平は頼んだ。きっと彼等は優しいと信じて。
つぎの日、憂鬱な朝を迎えるはずだった雪平の元に、社長夫婦が飛び込んできた。
雪平の可愛がっていた子供達も引き取れることになった、そう言った2人に何度も何度も確認して、それでも信じれなかった雪平は悪魔達を呼んだ。
悪魔に魅入られたら逃げられないんだぜ?とニヤニヤと笑う悪魔達を抱きしめて、love you!!と高らかに叫んだ。