妄想世界に屁理屈を。

“――いじわるなの”


「は?」


“な、なんでもないっ”


罰が悪そうに顔を背けた。

『――いじわるなの』

どういうことだ?


嫌な感じの疑問が思考を取り囲む。



“…私だって、アカネさまの霊力が欲しい。

でもアカネさま頼ってくださらないから、私がやれることを見つけるしかないの。

だから、黒庵さまを見つけなきゃ。
あそこに行けるのはあの方くらいだから…”

どうやら、黒庵さんを見つける→異界に行く、が予定らしい。

だからあんなに見つけたがっていたんだ。

「それを驪さんは、一人で行くって?」

“そう。驪さまは武の神様じゃないのに。…確かに、霊力が一杯あれば黒庵さまだって見つけやすいんだけど”

携帯召喚機も使えるしね。


“ちなみに、この雀の姿は節約しているの。

アカネさまと私は繋がってるから…私が居るだけで微量だけど霊力を使っちゃうから、少しでも使わない雀の姿にしてるの

主従関係だから、給料みたいに流れて来ちゃうってわけ”


盗み聞きのためなんかじゃなく、主を助けたいからか。

「スズ…」


切なげに瞳を揺らすスズ。

肩に手を添えると、抵抗なく乗ってくれた。

そうっと手に乗っけて、顔の前に運ぶ。


つぶらな茶色の瞳は、泣いているように思えた。


「スズは、よくがんばってるとおもうよ」



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