妄想世界に屁理屈を。


「一言一句丸暗記!?」


「そこじゃないでしょ感想ぉぉ!!」


バムッと胴体を蹴られる。



「とにかく、アカネさまは私に立場と名前と霊力と居場所を下さった。

そのとき私は思ったの。

絶対にこの人のために死のうって」



きゅう、と着物じゃないパジャマを掴む。

着物じゃない淋しさを紛らすように。



「私はアカネさまの隣以外歩かない。

そう決意したの。


だから、あんたがいないと困るの」


ビシッと指をつきだして俺を示す。


「あんたがちゃんと黒庵さまをみつけて、アカネさまの肉体をどうにかして、アカネさまがちゃんとこの世に生きられないと安心できないの

アカネさまを失ったら、私どうしたらいいかわからない。


アカネさまを見てきたの。

アカネさまだけを見てきたの。


それ以外なんて考えたくない

だって、それ以上の居場所なんてないの」



にっこりと。


泣いてるように笑った。



人間が行うふざけ半分の崇拝とは違う、本当の意味での崇拝を――俺は初めてみた気がした。
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