妄想世界に屁理屈を。
「戸籍には保護する家族がいないもの、みたいに書いてあったんだ。
あれなら警察も困り果てて、彼女に保護を依頼するだろうね」
見たのか、知ったような口をきく。
「保護を依頼された彼女は、次第に少女漫画よろしく惹かれていき、結ばれて結婚した」
「…」
アカネがいなくてよかった。
聞く限り、完全なるハッピーエンドだ。
世に聞くケータイ小説や、ふわふわした少女漫画みたく、めでたしめでたしで終わる最善の話。
誰もが納得のいく、美しくも浅はかな物語だ。
「――ふざけんな」
…馬鹿馬鹿しい。
その下には、アカネの涙で溢れてるっていうのに。
ハッピーエンドなわけないだろ。
当人らがハッピーエンドでも、犠牲の上で成り立って、なおかつ反対を訴えるものがいたら。
それは違うものとなる。
しかも俺らが化けの皮を外そうとしている時点で、もう終わりに等しいのだ。
きっと黒庵さんは疑ってる。
彼女が、本当に最愛の人か。
自分の存在意義を、疑ってる。