妄想世界に屁理屈を。
昔話は隠し部屋で
◇◆◇
「おいアカネ」
ざざ…ん、と。
途切れ途切れの波の音に混じって、そんな声が聞こえた。
「…………鸞?」
体育座りに埋めた顔をあげると、月明かりに照らされた鸞がかなり目の前にいた。
目と鼻の距離。
「うぉっ」
「くっく、お主よほど弱っているの。足音にも気づかんとは」
楽しそうに笑う彼女に目がチカチカする。
…さっき、喧嘩したんだよ…な?
ああああ!こいつはいっつもそうだ!
私の気持ちをちぐはぐにしちまう。
…喧嘩して、隠そうと思ってた気持ちをつい出してしまった。
それが気まずくて、こうして異界の狭間の海に来たってゆーのに。
このKYが。
「お主、今失礼なことを考えとるの?」
「気のせいだババア」
隣に当たり前のようにポスンと座る。
居座るつもりかよコイツ。
「ぴちぴちのOLに向かって…!お主体もないだろーが」
「うっせーな、悪ぃか」
「悪い」
ふんっ、と顔を背けて。
「お主を殴れんからな」
触れない私をみたくないかのように。