妄想世界に屁理屈を。

「えと…あ、そこの雀」


スズはきょろきょろと周りを見渡し、雀が木に止まっていたのに気付いた。


「この人間がつけてた帽子しってる?」


しらなーい、と無責任に言う木の上の雀。


「どんな帽子だ、人間」


「黒の…キャップ付きの」


「だ、そうです。探してきて下さい」


りょーかい、と飛び立つ雀を見て、帽子の存在を脳裏に描く。


本当にどこにでもある帽子だ。

だけど、思い入れが違う。


“やけに大事にしてんねー”

「…好きな子に、褒められたんだ」

“うわ、青春やん!いいなあいいなあ”


クラスメイト百瀬縁(モモセユカリ)に褒められただけの1050円の帽子。


だけど、とっても大事なんだ。



ものの2〜3分が過ぎたころ、雀が帰ってきた。

きちんと帽子を食わえて。


小さい体でよくもまあ、帽子を持ち上げれたもんだ。


「ありがとう」


お礼を言うと、雀は「どいたまー」と帰って…


「アカネぇえええっ!俺今雀と話しちゃったんだけどぉぉぉぉ!?」


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