妄想世界に屁理屈を。
そのときである。
キーンコーンとチャイムが高らかに開いたのが。
「あ、俺昼休み終わっちゃった」
「おにーさん学校が終わったわけじゃなかったんだ」
ああ、そっか。
てっきり苑雛くんは学校が終わったと思ってたのか。
「ご飯を食べる時間だったんだ」
お弁当箱を掲げると、「なるほど」と笑みを見せる。
「僕もさっき給食食べたんだ。別に食べなくてもいいんだけど、怪しまれるし」
「鳳凰だもんねぇ」
「僕がパジャマなのはそのせいだよ?本当はお昼寝の時間なんだ」
保育園児とかにはお昼寝の時間があったっけか。
いいなあ、俺も寝たい。
切に願いながら、手をふって彼らと別れる。
授業開始まで10分ある。
そっと、思考に身を委ねながら教室を目指した。
「……」
きっと、これからスズは嫌な思いをする。
過去を苑雛くんに話して、もしかしたら泣くのかもしれない。
そのそばにいてやりたいと願ったが、生憎学生の身。
学業を疎かにはできなかった。
恋愛感情などではない。
ただ、あのすがる目に、どうしようもなく胸が痛んだんだ。
まるで、家族が傷ついたような痛みだった気がする。