妄想世界に屁理屈を。
『……』
顔を腕のなかに埋めたまま、微動だにしない。
はあ、と隣に座る黒庵さんはため息をついた。
『……アカネ』
ちっ、と苛々したオーラを出しながら、彼はぶっきらぼうに彼女の名を呼ぶ。
…反応してほしいんだ。
一言でも自分の言葉に、返事が欲しくて仕方がないのだ。
なのに彼女は見向きもしない。
彼を、否、世界を拒絶している。
『お前、どんだけアイツ好きなの?』
『…』
…アイツ?
『確かに、俺も大好きだ。優しいし、なんかあったけぇし』
ああ、わかった…ハクさんのことだだ。
『お前が好きになるの、わかる気がする』
そう言った彼の目は、あまりにも切なかった。
口にしたくないけど、口にしなくてはならない。
苦虫を噛み潰したような、そんな目。
『あいつが消えたのは嫌だ。なんか、からだの一部がなくなったみてぇに心細い』
お前はそれ以上なんだよな、と無理矢理笑う。
一部という表現は間違ってない。
鳳凰はみんなで一つ。
一羽でもいなくなったらみんなが消えてしまう。