妄想世界に屁理屈を。


と。




“走れ”




いきなりそんな言葉に耳を疑う。


走れ?


“いいから!”


「やっぱあれだよなー、参拝するとスッキリする」

紅太が嬉しそうに話す。

「なんか…落ちた気分」

厘介がそれに答えた。

「はあっ!?お前なにかついてんのかぁ!?」

そんなどこにでもある会話を、


「何言ってんだお前、主語がねーよ主語が」


俺のアカネとの会話によって遮った。

「主語ぉ!?霊か、霊なのかぁ!ヤバイな厘介!」

アカネに言ったつもりが…紅太に伝わったんだけど。


“コイツやべーんだよ!気付けバカ”


「何がヤバイだ。お前がヤバイ」

アカネ意味わからん。


「なっ柚邑…!俺をヤバイだとぉおお!?」


厘介ごめん。


“…はあ、後ろ振り向け”


ため息が聞こえた。

「まあここ山だし。
なんか来るかもしれないな」

答えた俺に、

「な、なに脅そうと…」

紅太がビクビクと言う。

渋々向いてやることにしたが。



「…あ」



これ、あの、その、えと。


「うわぁああああ!」


走る。


それはもうダッシュで。


100m走8.5秒の俺が6秒とれそうなくらいダッシュで。


振り返る人も多く、怪訝な顔で見られる。

が、ほとんどは叫び声をあげて逃げた。


「きぃいいいいいっ」

「うぉ…!」


それは二人も同じだった。



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