妄想世界に屁理屈を。
「柚邑ー!」
紅汰が俺を呼んでいる。
いきなり友達が叫び声とともに落っこちたんだ、そりゃ心配もするし探すに決まってる。
「まっ「叫ぶな」
またまた女の声。
いい加減イラついてきたんだが。
姿は見えないし、邪魔はするし……本当俺が何したっていうんだ。
「なんなんだよお前!」
いるのかいないのかわからないそいつに叫んだ。
すると、視界にひらりと朱がうつる。
羽が落ちてきたのだと認識したのは、それが地面に落ちてからだった。
「え?」
かなり大きくて、羽ペンに出来そうなくらいしっかりしている。
足元に落ちたそれを拾うと、なんだか暖かみがあった。
赤い羽は、角度によって七色に光っている。
高級感のある光沢、一目でただの羽じゃないことがわかった。
「綺麗…」
思わず呟いてしまうほど、1つの芸術品として成り立っていた。
「──飲め」
「……」
「飲め」
「え」
ようやく日本語として脳に伝達してきた。
何言ってんだこの人(?)は?
飲め?
羽を飲むなんて何を言い出してるのやら。
聞き間違いとしておこうと、羽を見つめる作業に戻ろうとして。
「飲めこのカスが」
「カスっ……!」
「日本語わかんねーのかー?それならカスだろーが」
「んな……!日本語として成り立ってないの!羽は飲まないの!どこの漢方だよ!」
口が悪すぎるやつにむかついてしまったけど、事実そうでしょ。
羽を飲むなんて聞いたことない。
それに、なんだか惜しかった。
収集癖はないけど、こんな綺麗な羽ならとっておきたい。
……ていうかこの羽、こいつのものなのかな。
「飲んだらここから出させてあげる」
怒っても無駄と思ったのか、急遽やつは魅力的な言葉に変えてきた。