妄想世界に屁理屈を。
「そもそも式はね、子鬼(シキ)なんだ」
子鬼?
小さな鬼って意味か?
“そー。人間に扱えんのはその程度だ。紙やらなんやら使うのは形代っちゅー祓いの一種だ。式じゃねぇ。『式神』っていうのはちっと間違ってんのよ。鬼だから”
「へ、へぇ…」
「アカネの言う通り。小さい鬼しか使えないんだ。まあその鬼で、扉開いたり料理作らせたり蛙殺したり天狗やっつけたりしていたみたいだけどね」
ノートをめくりながら、苑雛くんが追記してくれた。
それで崇められ、神格を高めていったってわけか。
「十二天将を使えるのはおかしいんだ。
生前はもちろん、死んだあとにスズをラチったことも」
「…そういえば私、なんもしてない」
今まで聞き手に回っていたスズが、ぼんやりと語り出す。
「拉致されて、閉じ込められて。火の属性をつけさせられたまではいいの。
だけどそのあとは、ずーと暗い部屋に閉じ込められて……おかしい人扱いされて、ただそれだけだった。
何かの儀式とかにかりだされはしたけど、本当に座ってるだけ。
全然これといったことはしなかったなあ…」