妄想世界に屁理屈を。
「では、吾はそろそろ…」
「あれ?ミサキくん帰っちゃうの?」
「えぇ…」
立ち上がってベランダへ向かうミサキくん。
悲しそうな顔をしたのはスズだった。
「申し訳ありません。行かねばならないところがあるので」
“仕事かー?”
「はい」
ホスト…ではなく社長秘書という仕事についているミサキくん。
社長秘書って何するんだろう。
女の社長秘書とかだったら、社長の愛人ーとか妄想が働くけど、男だからな…ミサキくん。
「では、失礼します」
「ミサキくんまた明日ね!」
バイバイとデレたスズがミサキくんに手をふる。
ベランダの柵から身をのりだし、まっ逆さまに夜空に落ち――烏となって闇に溶け込んだ。
「行っちゃった」
ミサキくん大好きなスズがぼんやりと呟く。
“じゃあ私たちもそろそろ行くかー?明日も柚邑は学校だろ”
「そうですねアカネさま」
「我が家の風呂を使うが良い。ああ、さっき霊力を使ったろう?霊水も飲んでいけ」
ひしと苑雛くんを抱き締めて愛を確認していた鸞さんは、やけにキリキリとした態度で言った。
…ギャップが凄まじいんだけど。