妄想世界に屁理屈を。
タッパーに入ったよく冷えた霊水を飲み、水を張った風呂場に行く。
鸞さんたちは驪さんのいる異界に行くとき、いつもここから出入りしているらしい。
風呂に入るわけじゃなく、出入りするだけだから服は脱がない。
「“俺”はどうするの?」
「あとでおねーさんの家に届けておくよ。
明日の朝驚いて悲鳴あげたりしないでね」
く、釘を刺された。
ネックレスをかざし、キラリと水面が光ったのを確認。
スカートを押さえながら浴槽の脇に立つ。
「何かあったら遠慮なく頼るが良い。
明日も夕飯を御馳走して「ええ遠慮しますっ」
半ば逃げるように手を振って水面へ飛び込む。
トスン、と砂浜に落ちて、真っ暗に染まった海を見つけた。
風呂場から急に月明かりしかない世界に来て、目がチカチカする。
「今日は三日月なんだね、スズ」
「異界でも月は変わるからね。現実も月の動きは同じだよ」
「へぇ…」
ぽかりと、海底トンネルが開く。
いつも通りに驪さんの家へと歩を進めた。