妄想世界に屁理屈を。

歯がゆかった。

体は動けないし、なんだか生殺しの気分。

やめろと叫びたい。

だけど、叫べず――


“やめろっ”


アカネは叫んだ。

でもそいつには伝わらないのか、無視。

伝わらない?

じゃあなんでスズには伝わるんだ?


(なる、心臓、食べる)


荼枳尼天がゆっくりとその女が巫女に近づこうと――


ぴたり、と止まった。


くるうりとゆっくり、こちらをむく。

俺をじっと見つめた。

黒い目と目があう。

ドキリと心臓が跳ね、痛んだ。

やましいことがバレたときの、ヤバイって感じにとても似ている。


威圧的なその女は、ニヤリと妖艶に笑って言った。



(み、つけた)



「ひ、ひぃっ」



つい声が出てしまった。

喉が潰れたような、情けない声が。


そしてゆっくりと標的を変えた荼枳尼天は、補色目的で歩み寄ってくる。


一歩、また一歩と、嬉しそうに。
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