妄想世界に屁理屈を。

何度でも、何度だって


◇◇◆


私は洋服デビューを果たしたため、人形でいてみることにした。


やっぱり、スカートというモノはなれないや。

風にヒラヒラして、スースーする。


柚邑の妹さんから頂いた洋服を着て、ラーメン屋の前のシャッターを下ろした店の前で突っ立って早20分。

雀の形でもいいんだけど、ちっちゃいし――烏とかにギャーってされたら怖いから、人形でいる。


「……」


人が、いっぱい。

背がちっちゃい人や、髪の毛が長い人、ミサキくんみたいにスーツを着てる人。


…人はあんまり好きじゃない。


いい思い出がないんだもん。


「…柚邑早くお友達と別れないかなあ…」


自分の好きな人間が人間と関わってるのが寂しくて、思わずそう呟いてしまった。

いけないいけない。

柚邑はこっちに付き合ってくれてるだけで、お友達との生活もある。

少しは神様と離れて、羽を広げさせてやんなきゃダメだって、驪さまも鸞さまも仰ってた。


でも、寂しいな。


私、柚邑は嫌いじゃない。

人間だけど、そんなに嫌いじゃない。


バカだけど面白いし、私たちをきちんと考えてくれる。


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