妄想世界に屁理屈を。


滴るごとに悪臭が漂う血をそのままに、彼は懐から筆を取り出して、地面に五芒星を書いた。


見覚えがある、霊力を帯びた筆。

確か、白虎くんの毛で作られた――


「…ご、ご主人さま、たしかそれ白虎くんの…」


「ああ。朱雀、君のお友達もいっぱいいるから、安心するがいい」


「…みんなもまた、つ、捕まったの…?」



白虎くんに、玄さんに、青竜さま――



ああ、また。


また、あの悪夢が。



「さあ朱雀、繋がったよ。私たちの家に帰ろうじゃないか」


「いやっ……なんで、どうして!?だって、白虎くんには白虎くんのご主人がいて、玄さんには玄さんのご主人がいるのにっ…!なんで、十二天将なんかに…」


私のように、四神にはそれぞれ主人というか隷従する相手がいる。

白虎くんにはとってもチキンな麒麟さま。

玄さんには白黒はっきりつけたがる霊亀さま。

青竜さまには娘の応竜さま――。


それぞれが主を裏切ってつくはずないのに。


なんで、どうして。



答えは簡単。



「騒がしい奴は好きではない」



ついたのではなく、連れ去られたからだ。

トン、と。

――腹を、刺された。



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