妄想世界に屁理屈を。


「――っ」


痛みよりも、光景に驚いた。

今、短剣なんか取り出す素振りがあっただろうか。

いや、刺すことになんの躊躇いもないなんて。


なんちゃらコートが、スカートが、どんどん血に染まっていくのを、衝撃とともに見つめる。


思考が回りすぎておかしくなりそう。


呆然としていた隙に五芒星の中心に連れていかれていた。



刹那、景色が切り替わる。



お寺のお堂みたいな、木でできた床に柱。

全体的に薄暗い印象な場所だった。


この場所にもともと書かれていた五芒星と、さっき書いた五芒星を繋げて移動したのか。


「…っぐ、あ…」


膝をつく。

ぽた、と滴った血に、驚愕した。


詰まるような激痛に、思考が打ち切られた。


「痛みを自覚したか」


無慈悲な言葉に、怒りを覚えた。


「あ、なた、まさかっ…」


「そのまさかなのだよ、私の狙いは。
――ほうら朱雀、君が心酔する神々の神から治癒を受けるがよい」



傷が、治っていく――



「やめてっ、アカネさま、お願いっ」


叫んでも何をしても、治癒は止まらない。



霊力がどんどん送られてくる。



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