妄想世界に屁理屈を。


「…黒庵さま、お力お借りいたしますっ…」

糸から剣を取り出した。


黒庵さまの武器、黒鳥光潤(コクチョウコウジュ)の剣。

私たちは、その分身というか一部を糸にして首に繋げている。


その剣を子鬼にためらいなく刺し、斬った。

その命ごと、右肩から左脇腹までざっくりと。


声にならない悲鳴をあげた子鬼は、真っ二つに割れたしわくちゃな体を床に倒す。


ごめんなさい。だけど、アカネさまのもとには行かせない。



「次はご主人さまの番だよっ」



「主に逆らうか、朱雀」


黒鳥光潤の切っ先を向けられた安倍晴明は、同時もせずに私を見つめる。

大丈夫、だってこれは黒庵さまの剣だもの。

怖くない、怖くない、怖くない…


「どうした?私の番なのだろう?体が震えておるぞ?」


挑発するように笑われて、ようやく気づいた。

私は戦闘になれていない。

人形だと、どうしても怖じ気付き、躊躇ってしまう。


私はとっても弱いから。


アカネさまの隣に立つ資格がないほど弱いから、だから。



だから怖じ気付いてしまうんだ。



彼は、安倍晴明は、私の弱さを知ってる。

戦闘には使えない、神格と情報をもつだけのただの神獣。

そんな私は、十二天将の扱いずらい神として扱われた。


凶将は夜を意味する…などと解釈されるが、辻褄があうはずない。

“夜”を意味する“太陽神”なんて。あやふやすぎて、存在価値のないものと言われてるようなものだ。


故に監禁され、強いたげられた。



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