妄想世界に屁理屈を。
アクシデントとゆーか当然のことなんだけと。
間合いに入ったとたん、鎌がヒュッと目の前を走る。
少し鼻を霞めただけなのは、俺が勢いよく止まれたから。
「…は?」
マジかよ、こいつガチで切んのかよ。
今更恐怖が沸くが、後ろに逃げることなどできない。
(男、嫌い、ムカつく、不味い、でも殺す)
「…ムカつくって何かしたか俺」
理不尽な言いがかりを突きつけられた。
いやあ、超逃げたいっス。
でも、と後ろを向くと。
肩から血がどんどん流れてるスズがいる。
ちょっとの知り合いだけど、人がやられて黙ることはできない。
「アカネさま…あか、ね…さま…」
彼女は、健気だ。
こんなにまでなって、アカネを守るために必死になっている。
と。
“何してんだっ!このバカがぁっ”
どうやら俺を怒ったらしいアカネの声に、頭上を見上げてみる。
「はぁっ…?」
赤い美しい鳥が飛んでいた。
俺がさっき食べた羽根を体中に纏い、長い長い尾と冠みたいな羽根が非現実的だった。
狐ぐらいの大きさで、羽根を広げた優雅な姿は猛禽類のよう。
羽根の色はまるで虹みたいで、色んな色に変わっている。
あぁこれが――鳳凰か。
思わず息を飲む神々しさだ。
あまりの美しさに、目を奪われた。
「アカネさま、なんで…」
スズが驚いているのを無視して、己の羽根を抜く。