妄想世界に屁理屈を。
苑雛は何か他のことを企んでるらしく、子供らしからぬ思案に満ちた笑みを見せる。
なに考えてんだか。
「安倍晴明、君は一一結局、この地にいて葛の葉に会えたのかな」
葛の葉。
安倍晴明の母である妖狐。
なぜ今その話を持ち出したんだ?
今は無関係なはずなのに。
息を飲んだ安倍晴明に手ごたえでも感じたのか、楽しそうに笑みを深めた。
「簡単な話さ。
きみは単純に、マザコンだった。
突如訪れた別れのせいで、母親離れしてなかったのさ。
信太の森で宝物をもらおうが、きみの心は晴れなかった。
母が恋しくてたまらなくなった君は、異界である此処に別荘を建て、母を待った…
と、大方こういうわけだろう?」
唖然とする安倍晴明は、侮辱に気付いたのか真っ赤になった。
「黙れ!し、知ったような事を言いやがって!」
「別に恥ずかしがることじゃないじゃん〜
僕たちだって、お父さん大好きだよ?」
ねー?と首を傾げて聞いてきたが、認めるのが恥ずかしいので顔を逸らした。
「貴様!苑雛の言葉を無視しよって!」とか空気ぶち壊す発言が約1名から聞こえたが、面倒なので耳を塞いだ。
「そもそも、僕は君がお母さんがすきかどうかなんて興味ない。
会えたか会えていないかを聞いてるんだ」
話を早く終わらせたいのか、簡潔に問う。
「…っ、会えて…ない」
「そっか」
それか、どうしたと言うのだろう。
いまいち苑雛のやろうとしていることが掴めない。