妄想世界に屁理屈を。
「さあっすが苑雛!
賢い子じゃ!賢い子じゃ!」
苑雛のこととなるとなんでも肯定したくなる鸞は、辛抱たまらんとばかりに抱きしめた。
「わ、我が主ぃ〜…人前ですよぅ」
「ちょっとォ、イチャこいてるとこ悪いけど、早く質問終わらせてくれないィ?」
聞き手に回っていた応龍さんが、めんどくさそうに言った。
「ああ、ごめんなさい。すぐに終わらせますね」
外面の良い苑雛が即座に謝る。
「昔から説はあったんだ。
狐の村なる異界がある、と。
ねぇ、泰夫婦?」
白虎に頬擦りしていた泰夫婦が、キョトンとした顔で答えた。
「なんの話だい?」
「狐さんの話みたいだわ」
「狐さん?ああ、あの金の毛色が美しい…」
「しなやかな毛をお持ちの種類だったわ」
「いや、毛並みの話をしているんじゃないんだけど」
思わず苑雛が突っ込んだ。
実は麒麟という神獣は、何種類もある。
麒麟は四肢をもつれっきとした獣。
黄色のものを長として麒麟と呼び、黒いものを角端、青いものを聳弧、白いものを索冥、赤いものを炎駒という。
同じ異界に住み、同色同士の純な血をもつ麒麟の夫婦のみがその色の長になるという。
鳳凰と相対する神獣として太古から崇められている彼らは、どこか平和ボケしていて一一はっきり言って俺は苦手だ。
生き物を愛するがあまり草も踏みたがらず、わざわざ浮いて移動する。
血や争いが何より嫌いで、武の担当である俺が近寄るとぴゅーっと一目散に逃げやがる。