妄想世界に屁理屈を。
「その間に、彼は色んなところに行っていろんなものを見ていたみたいで、どんどん感情を増やしていったんです」
一回手に入れてしまった感情は、とどまることを知らなかったのだろう。
歩いている雛に可愛いと思い、その雛が死ねば悲しいと思う。そして雛を愛しいと思っていたことに気付く。
そんなこんなで、彼はどんどんを増やしたのだ。
「私、外怖い超インドアじゃないですか」
「ひきこもりですもんね」
「その言い方やめてくださいよー
せめて自宅警備員にしてください」
「それもどうかと思いますけどね…」
「……まあ私としたら、かわいい子供が危ない外に行くのが不安だったんです。
だから結構今なにしてるのかなって視てたんですよ」
見るではなく視る。
大地を意味するお父さんは、この世界のことを意識すればなんでも感じ取ることができる。
お父さん曰く疲れちゃうからやらないみたいだ。
何かあったら鳳凰に連絡が行くようにしてあるので管理を放ったわけではない。
「そしたらある日、シロの前に一匹の狐が現れたんです。
それは女狐で、ある村の一一そう、狐の村の住人でした」
そこで繋がるのか。
「彼女は村から脱走していて、全身ズタボロ。
しかも子を身籠っていて、なかなか生まれず困っていたところでした。
感情が生まれていたシロは、それを見捨てるなんてできず、子供と女狐を助けようとします。
ですがもう子供は手遅れに近かったんです。
女狐はしきりに子供の安否を気にするうわ言を繰り返します。
きっと子供がこのまま死んだら、この女狐も後を追う。
そう考えたシロは、なんとしてでも救うと一一自分の一部を子供に植え付けて神様にしたんです」
例えば、アカネとスズのような。
霊的につなげ、保護し、援助するというような、そんな関係になることをしたのだ。
自分の一部をその狐の子に一一。
アカネが聞いたら喜びそうだな、と脳裏によぎった。
「もともと妖狐だったおかげで楽にその神霊の一部は子狐に入りました。
結果、母子ともに無事に出産を終えることができたのです」