妄想世界に屁理屈を。
気分が憂鬱なまま学校に登校する。
“柚邑、どこまで話すつもりなの?”
雀の格好をしたスズが、うろちょろと俺の周りを飛び回る。
「とりあえず鱺さんのことは言わないでおこうと思ってるけど…」
周りの目を気にしながら、小さい声で応答。
学校の近くになると、やっぱり同じ制服の人が目立つ。
あの人独り言喋ってるーって噂立てられたら嫌だ。
“鱺さまのことは言わないでよ!
……信じてもらえると思う?”
「ゆーちゃん=おれだってこと?」
高校では、メイちゃんと命名されるほど有名になっているメイド服姿の美少女。
毎日学校がひけると街に繰り出し探しに行くのだ。
妹設定になっているスズと合わせて、乾いた非リアな男子高校生たちのオアシスとなっている。生きる希望とも言えよう。
それが俺なんて。
誰が信じるだろう。
「でもなぁ、信じてもらわないことには話が前に進まないんだもんなぁ…」
“苑雛に来てもらって目の前でゆーちゃんになればいいじゃん”
「……何かを失う気がする…」
まあ、最悪そうするしかないのかもなぁ。
スズは人間嫌いだから出したくないし。