妄想世界に屁理屈を。
◆◇◆
空虚を感じないことに気付いた。
「あーあ…無理しちゃって…」
倒れた柚邑を幼い弟でも見るような目で見つめる彼女。
もうそろそろで日が沈むという時間帯、俺らはお父さんの邸に帰っていた。
「すまんなー、だありん。
柚邑運ばせて。重かったろ?」
「…別にンなガキ、重くもなんともねぇよ」
「ま、こいつ細いしなー」
そう言って俺の布団で眠る餓鬼に目を落とした。
ちくりと胸がざわめき、爆発しそうになる程の圧迫感を感じた。
世に言う嫉妬。
「ガキにご執心なのかよ…」
「はぁ?妬いてんの?」
思わずすねれば、つり目がちな目で睨まれる。
「アカネちゃん怖ぁーい」
「私に逆らわないほうが身のためだぜー?」
「逆らえねぇよアカネちゃんには」
そう言うと嬉しそうにニンマリと笑う。
なぞの空虚が満たされていくのを感じた。
穴が空いたように何かがこぼれて行って満たされないあの感覚が、まるで嘘のよう。
よくわからない嬉しさというか、そーゆー充実感が満たされて溢れていく。