妄想世界に屁理屈を。
「とにかく、生まれてくるかどうかすらわからないわけです」
「……」
それはそれで複雑だ。
居るってわかった時はヤベェって焦ったけど、死ぬかもしれないとわかったら…
さすがに俺もそこまで落ちぶれちゃいない。
まだ目にしてもいない赤ん坊に感情が芽生えてるのだ。
生きていて欲しい、できれば人並みの幸せに。
…親というのはなんだかとっても恐ろしい。
愛してもいない女の子は愛してるのだ。
「……まあ、仮に生きてたとして一一どうするのですか?」
「え?」
落ち込む俺に気付いたのか、生きている前提で話をし始めた。
「生まれてくる子供は半神です。
現代の信仰を失った殺伐とした神々が、無防備な神格の高い子供を放ってくはずがありません」
「一一っ」
そう、だった。
柚邑のことで危ない危ないと気を揉んでいるほどなのだ。
弱肉強食の世界。
生まれてくる子供は、真っ先に食われてしまうだろう。
その神格ごと。
「どうするつもりですか?」
「………」
どうするもこうもねぇだろ。
そのまま、俺は襖を勢いよく開けて廊下に飛び出す。